2014年3月
はりきゅうを知ろう!その3
きゅう
お灸はもぐさ(艾)と呼ばれる、ヨモギの葉の裏にある繊毛を精製したものを使用される。西洋語にもmoxaとして取り入れられています。
もぐさは、夏(5~8月)に、よく生育したヨモギの葉を採集し、臼で搗(つ)き、篩にかけ、陰干しする工程を繰り返して作られる。点灸用に使用される不純物のない繊毛だけのもぐさを作るには、多くの手間暇がかかるため、結構高いんです。高級品ほど、点火しやすく、火力が穏やかで、半米粒大のもぐさでは、皮膚の上で直接点火しても、心地よい熱さを感じるほどです。
もぐさの成分
もぐさの主成分としては毛茸(葉裏の白い糸、T字形をしているのでT字毛とも呼ばれる)と線毛(芳香成分として精油(テルペン、シネオール、ツヨン、コリン、アデニン)、タール)、11%の水分、67%の線維と11%のたんぱく質などの有機物、4~5%の類脂質(脂肪)、4~6%の無機塩類(灰分)、ビタミンB、ビタミンCなどです。
水分が多く、灰分、不純物が少ないもぐさ(国産高級もぐさは3~4%)が一番良いとされています。
不純物の混じっている安価なもぐさは、隔物灸(温灸)などに用いられます。
良質もぐさ | 粗悪もぐさ |
---|---|
古く芳香が高い | 新しく青臭い |
淡黄白色 | 黒褐色 |
手触りが良く柔かい | 手触りが悪く固い |
繊維が細かく密 | 繊維が悪く粗 |
夾雑物が少ない | 夾雑物が多い |
よく乾燥している | 湿気を帯びている |
点火しやすく途中で消えない | 点火しにくく途中で消えやすい |
煙と灰が少ない | 煙と灰が多い |
熱は緩和で心地よい | 熱は急激で耐え難い |
もぐさの用途と種類
灸用
もぐさはその精製の度合いによって、点灸用・灸頭鍼用、温灸用の区別があり、また現在では、せんねん灸など、様々な「もぐさ加工品」が売り出されています。
- 点灸用
- 『散りもぐさ』と呼ばれる米粒大または半米粒大にちぎり、つぼ上 に乗せ、点火するためのもぐさで、精製度合いが高いため非常に高価で、鍼灸師向けの卸売価格でも1gあたり何百円もするものもあります。家庭用には、2g ほどを袋詰めにした『ばらもぐさ』と、1回分ずつを切ってそろえてある『切りもぐさ』があります。美しい淡黄色で香りがよく、手触りもなめらかで、点火しやす く、切りもぐさは燃えると大切艾が130度、中切艾(米粒大)が100度、小切艾(小麦大)が60度ぐらいになります。
- 灸頭鍼用
- はりの頭(鍼柄)にもぐさをのせてはりと灸のダブルの効果が期待できる灸頭鍼のためのもぐさ。
- 温灸用
- 皮膚ともぐさの間に、しょうが・にんにく・みそ・塩などをおいてお灸をすえる温灸(隔物灸)のためのもぐさ。緑色を帯びた灰色で手触りはざらざらし、ほし草のような青臭いにおいがある。
その他の用途
朱油を含ませ朱肉の印池としても用いられる。
雑学
伊吹もぐさ
百人一首の51番目にある、藤原実方朝臣(ふじわらのさねかたあそん)の歌、「かくとだに えやは伊吹の さしも草 さしも知らじな 萌ゆる思ひを」から、滋賀県の伊吹山がもぐさ原料ヨモギの特産地(製品もぐさを80%生産)と思われているが、滋賀県ではもぐさ用ヨモギはほとんど作られておらず、新潟県、富山県など、もぐさ原料のヨモギは北陸産が多い。また、この「伊吹山」は、滋賀県ではなく、栃木県栃木市にある小さな山だという説もある。もぐさの商標には、お釜のマークの「釜屋」が有名だが、これを名乗る業者は数社ある。
もぐさが施灸を目的に作られた小塊を艾炷(主に円錐形・円柱形)という。